Synopsis

中世、「疫病」の大流行が人口の三分の二を消し去ったあと、とある錬金術師が「人造人間(ホムンクルス)」の製造に成功した。 貴族たちはその技術を模倣してまがいもののホムンクルスを作り、不足した労働力の代わりとした。生まれた彼らはそのいくつかの身体的特徴から、あるいは「人間よりも下等な生物」という侮蔑も込めて、「蟲」と呼ばれるようになる。 蟲たちは白い髪に紅い瞳を持ち、成熟すると見た目には歳を取らないが、人間の四倍の早さで老いる短命な存在である。 時は流れ、十九世紀の英国にちょっと似ていて、ちょっと違う王国でのこと。 王立陸軍士官学校に所属するキース・ホーリーランド公爵は、新入生の蟲であるアルフレッド・アップルビーに付きまとわれて困惑していた。 自身のいとこで、蟲に対して差別的な態度を隠さないワイアット公爵マイルズ卿から、ほかの蟲を庇ったところを見られて心酔されてしまったらしい。 しかしキースは、過去のできごとから友人も恋人も作らないと決めていた――初恋の相手であった蟲が、みずから命を絶ってしまったのである。 キースの母は王族でありながら未婚のまま、キースを産んだ。 蟲に対して融和的であった母に対して、人々は「蟲と交わったのだ」と陰口を叩き、「蟲めずる君(きみ)」と呼んだ。 父親が誰なのかを語らないまま母は亡くなってしまったが、「自分と結ばれることでキースにも同じような悪評が付きまとうのでは」と恐れた初恋の蟲は、思い悩んで死を選んだ。 以降、キースは心を閉ざして誰とも深く関わらないようにしていたが、どうしても、ひどい扱いを受ける蟲を見かねて庇ってしまう。 「蟲めずる君」の蔑称は、すでにキースに付きまとっていた。 そんな評判など気にせず、アルフレッドはキースとの距離を詰めてくる。 どんな手を使ったのか、教官から訓練上の「バディ」として指名されるように仕向け、キースの隣人と寮の部屋を交換してもらい隣に越してきた。 さすがにたまりかねたキースは、アルフレッドの秘密を調べ、彼を遠ざけようとする。 アルフレッドはどのような手を使って、自分の思い通りに事を運んでいるのか? 調べていくうちに、キースは彼が「本来なら彼が知るはずのないこと」まで知っていることに気づく。 その秘密をもってアルフレッドに対峙し、「バディを別の人間に変えてもらおうと思う」と告げると、アルフレッドは「あなたでなくちゃ意味がない」と反発する。 執着とすら呼べる、強い思慕の情に怯えたキースは、アルフレッドに尋ねる。 「せめて、どうして僕でなければいけないのか教えてくれ」 アルフレッドはキースを抱き寄せると、「俺はどうやら、あなたに出会うのは三度目らしいのです」と告白した――この身体で生まれてくる前に、別の蟲としてキースに出会った記憶があるのだと。 アルフレッドの過去の記憶が一体どんなものなのか。 好奇心にあらがえず、キースはアルフレッドとの関係を深めていくが、次第に士官学校をめぐる陰謀に巻き込まれていく――。

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Kakuyomu
Kakuyomu10/18/2025
  • Current蟲めずる貴公子は三度目の邂逅で愛を知る