Synopsis
毎日何もせず、ただベンチに座るだけ。そんな自分を変えられないし、変えようとも思わない──。
学校をサボって公園のベンチに通いつづけ、入学早々に留年となったヘンな大学生、葛和田日鷹(くずわだひだか)。
そんなクズな俺が出会った少女は<おかし>かった。
「わたしの名前はクッキー! 旅人よ! 相棒のリンゴちゃんと一緒にどこまでも、まだ見ぬ夢と冒険を求めて旅をしているのっ!」
超巨大なリュックサックを背中にぶるんと弾ませ、とんでもないおしゃべり癖をもった自称旅人の謎の少女、その名もクッキー(絶対に本名じゃない)。
彼女はベンチに座る俺のことを町の案内NPCだと誤認したり、この町を冒険しがいのあるダンジョンだなんて豪語したり……どうやら現実とファンタジーの区別がつかないらしい。
「どこか遠くに行きたい」
「例えば、海を歩いて、ここじゃない、どこかに行けたら……」
俺の言った冗談をクッキーは真に受けてしまい、どころか俺のことをベンチに取り憑いた妖怪だなんて決めつけて、その願いを叶えて成仏させてあげるだなんて、勝手に話を進めやがって。
そして彼女は、夢も魔法もファンタジーもあるはずない、この現実の世界で、言ったのだ。
「だってわたし! 海を歩いて渡って、旅をしてるんだもん!」
「ベンチわらしさん。わたしと海を歩く、冒険の旅に出てみない?」
留まる男と、旅する女。大人になれない二人。
実在の町、幕張を舞台に、しょうもない彼らの、かけがえのない冒険が始まる。
「……ねえ」
旅人はささやいた。
「夕陽って、なに色か知ってる?」
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