Synopsis
「冷凍庫の20年」
冷たさに閉ざされた時が
二十年ものあいだ
台所の片隅で凍りついていた
毛布にくるまれ
枯れ葉に覆われ
誰にも語られぬまま
ただ静かに、娘は眠っていた
母は毎朝
冷凍庫を横目に
言葉にならぬ会話を繰り返す
「おはよう」「大丈夫よ」
罪と愛が重なり合う声
季節は巡り
桜も散り
台風が屋根を打ち
冬の雪が窓を覆っても
冷気の中では、時間は止まっていた
世間の目を恐れ
孤独に縋り
やがて夫を見送り
義母を見送り
ひとり残された家の中で
ただ一人、娘だけが
凍ったまま生き続けていた
そしてある日
母はようやく口を開いた
「ここにいます」と
二十年の沈黙を破って
冷凍庫は問いかける
愛だったのか、逃避だったのか
守ったのか、隠したのか
――答えはもう
凍りついたまま
誰の手にも解けはしない
ただ
母の胸に刻まれた
二十年の冷たい鼓動だけが
最後まで震えていた
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