Synopsis
「ある日、記憶が消えた」
ある日、
名前がこぼれ落ちた。
道の角も、呼びかける声も、
霧に溶けてゆく。
残されたのは、
心臓の鼓動と
掌に残る温もりだけ。
――私は誰だろう。
――あなたはどこにいるのだろう。
歩けば歩くほど、
世界は見知らぬ景色をまとい、
見慣れたはずの看板さえ異国の文字に見える。
けれども、
人の眼差しは覚えていた。
優しさは、記憶より深く刻まれていた。
もしも記憶が消えても、
人はひとりではない。
心は、
忘れられないものを抱えて生きているから。
Serialization Info
Web Novel