Synopsis

長ノ川唯(ながのかわ・ゆい)は、生まれつき身体中に呪詛の文字が刻まれ、首筋には五芒星と藤の花の印を持っていた。その異様さから両親に疎まれ、屋敷の奥の蔵でひとり暮らすことを強いられる。唯一の理解者だった乳母・佐々木も妹の誕生と共に離れ、唯の生活は、女中が食事を運ぶだけの孤独な日々となった。彼は通信制大学に通いながら、蔵で本を読み返す毎日を過ごしていた。 十八の夏、突如として結婚話が持ち込まれる。相手の名前も性別も知らされぬまま、問答無用で夫婦にさせられる唯。真実の家族を求めていた彼は、半ば喜びつつも、自分を不気味がるのではと怯えた。佐々木に見送られ新居に向かうと、夫となる人物は多忙で姿を見せない。 数日後、帰宅したその人──藤間廉人(ふじま・れんと)の存在に唯は驚く。旧宮家の血を引き、財閥を率いる名門の人物だったのだ。婚姻届に刻まれた力強い筆跡から、唯は彼の性格を想像する。恐る恐る対面すると、廉人は唯を見て微笑んだ。 「随分と可愛らしい花嫁を貰ってしまった」 呪詛に触れることなく、むしろ自らを「鬼」と告白する廉人。額に浮かぶ赤い印を見ても、唯は怯まず答える。 「鬼でもカエルでも、家族になってくれるのなら」 その言葉に廉人は笑い、二人は少しずつ夫婦の形を築いていった。朝食を共にし、外出し、同じ布団で眠る日々。互いに惹かれ合い、恋に落ちていく。だが、廉人はどこか唯の向こうに別の誰かを見ているようで、唯の胸に影を落とす。 結婚後、唯は呪いの痛みに頻繁に襲われ、やがて前世の記憶のような幻を見るようになる。廉人は相変わらず忙しく、孤独を抱えた唯は一人で外に出るようになった。ある日、道に迷った唯を助けたのは優人という青年だった。世間知らずの唯を気にかける優人と秘密の友人関係を結ぶうち、彼は唯に恋心を抱いてしまう。 しかし唯の愛は廉人にある。首筋に刻まれた五芒星と藤の花──それは唯と廉人を結ぶ運命の証だった。やがて、廉人の秘められた過去と唯を縛る呪い、そのすべてが二人の恋を通して明らかになっていく。

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Kakuyomu
Kakuyomu09/20/2025
  • Currentされど恋して命を知りき