Synopsis

トンネル程の大きさの下水道。 何かの腐敗が鼻孔を刺す。 真ん中には汚水がゆるく流れ、ぬかるむ通路は壁をなぞるように続いている。 僕はぬるりとする斜めのコンクリートを頼りに、奥へ奥へと、足を擦っていた。 何度も臭く汚れた水滴が顔に垂れる。 多分もう、右手の甲や顔は見る影もない。 全く見えない出口だけを信じ、声を響かせ、折れそうな心をやっとの思いで奮い立たせていた。 ふと、足元で何かがパキと鳴らす。 徐々に音は増える。 膝丈までなったその中には、足や腕がしっかりと原形を留めている物もある。 骸が敷き詰められていたのだ。 震える足を止める事が出来ない。 対岸では見慣れた生首が、幾つもならび金切り声で泣いていた。 僕は後悔する。 黒い涙を流しながら、何度も後悔する。 何故わかっていて、この足を止められなかった 知っていた。 理解していた。 熟知していた。 予想していた。 想像していた、はずだった。 ここは夢を紡ぐ狭間、現実を踏み潰し、僕はただひとり、転がるように底へ、底へと落ちていく

Serialization Info

Web Novel

Service languages
Every Star
Every Star02/14/2008
  • Currentきりぎりす