Synopsis
『二兎を追うものは一兎をも得ず。
だが恋はただ一兎を追えばいい』
そんな文章が画面の中央に表示された。
薄緑色の背景に濃紺の文字のシンプルなレイアウト。アプリのホーム画面だ。
ついにインストールしてしまった……!
膨らみそうになる不安や期待を抑えながら私は男性の写真が並ぶ画面を見つめる。
――マッチングアプリ『IT《イット》』
最近話題の恋活アプリだ。
中でもこの『IT』は業界初の革新的なシステムを導入しているらしく、詐欺や勧誘など危険人物はほとんどおらず、先に繋がる本気の出会いが多いと評判だった。
「――あ」
ふと、指が止まる。一枚の写真に目が留まった。
青色のシャツを着た男性が映っている。
歯並びのいい口元を惜しみなく見せる屈託ない笑顔だ。かわいいなと思った。
会社員として働いている。趣味も私と合いそうだ。
「……ええい!」
勢いをつけて画面右下のハートマークをタップする。
彼の顔写真が一羽のウサギに変身した。
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