Synopsis
『紋簿語り』は、野口町に暮らす松永景司が、自らの沈黙と向き合いながら紋簿(個人の記録帳)を綴っていく物語である。 苔の庭を手入れする日々の中で、景司は息子とのすれ違いや、語られなかった家族の記憶に思いを馳せる。 やがて、地域の若者たちとの交流を通じて、沈黙の中に宿る知恵や思いが言葉となり、紋簿は個人の記録から町全体の語りへと広がっていく。 曾祖父が苔に託した記憶、父の背中に刻まれた沈黙、そして自らが語るべき言葉。 景司はそれらを紋簿に記し、次の世代へと静かに手渡す。 最終的に紋簿は町の人々の手によって継がれ、沈黙は風となって町を包み込む。 語られなかったものが語られることで、記憶は生き続ける。 これは、沈黙と語りの間にある「継承」の物語である。
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