Synopsis
超・妄想コンテスト「お花見」の応募作品です。
新緑の頃から現世に立ち返り、幕府の治世が揺らぐ時の、民の処世を見てきたタカムラ。秋になる頃から米価の高騰を罵る人の声を聞くようになった。そこで、一千年ぶりに禁裏へ向かうと、長州征討の話を聞いている。各藩に出兵を命じた幕府は、その翌年に十万を超える軍勢を長州に向けた。合わせて兵糧確保のために行った米の買い占めは、更なる米価の高騰を招き、各地で打ち壊しを起こさせている。しかし、戦局に向き合う幕府はそれどころで無く、六月から始まった戦闘で敗色が固まっていた。こんな折、大坂城にいる江戸幕府第十四代将軍家茂の危篤が伝えられ、タカムラは大坂城に赴いた。そこでは、霊魂となった家茂と相対し、政(まつりごと)の有り様を話すが、いまだ二十一歳の家茂には、この動乱を乗り切ることは出来ないと思った。そこで、江戸幕府を解体することを諭すが、これが無理なことと覚った家茂が冥界への道を進んで行った。
一つの時代の節目を見届けたタカムラは、現世の名残に北野天満宮に向かった。往時、タカムラの後に、学者としての地位を襲業したと思っていた道真。ところが時の権力者に疎まれ、左遷されて命脈を終わらせている。こんな生涯が家茂と被さるように思ったタカムラは、ここで見た飛梅にかつて詠んだ歌を懐かしく思い出していた。
「花の色は 雪にまじりて 見えずとも かをだににほへ 人のしるべく」
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