Synopsis
何事にも関わらず、波風を立てずに過ごしてきた中年男・景司。社内でも「いてもいなくても変わらない男」とされていたが、ひょんなことから会社内の派閥争いに巻き込まれてしまう。誰かの“駒”として利用されるかと思いきや、景司はただ微笑み、曖昧に返事をするだけ。それがなぜか信頼と期待を呼び、「沈黙の策士」として評価されていく。次第に重役にまで出世し、ついには社長に就任。本人に野心はなく、ただ「低見の見物」を決め込んでいただけだった。
だが、何もしないことこそが、時に最も難しい処世術。人の言葉に乗らず、争いに加担せず、沈黙と忍耐でやり過ごすその姿は、周囲に安心感を与え続けた。
退任後、景司は郊外の団地に移り、小さな菜園でミニトマトを育てながら静かな日々を過ごす。祭りのざわめきの中でも、一歩引いて見守る姿勢を貫く彼の胸には、「人生なんでも、了見ひとつでめでたくなる」という信条があった。
Serialization Info
Web Novel