Synopsis
高校二年生の春野真白は、図書室で偶然見かけた“うしろ姿の誰か”に、恋をした。
名前も、顔も、声すら知らない。けれど、その背中は、あまりにも静かで美しくて――真白は思わず、スケッチブックを開いた。
それから彼女は、何十枚もの“うしろ姿”を描き続ける。
まるで呪文のように、心を閉じるように。
「振り向いてしまったら、この恋は終わってしまう」
そう思っていた。
そんな真白の前に、同じクラスの宮内悠真が現れる。バスケ部の陽キャでありながら、静かな空気をまとった彼。ふとした会話や視線、言葉の端々に、真白は“あの背中の人”と似た空気を感じてしまう。
けれど彼は違った。似ているけれど、同じではない。
“あの背中の彼”は、幻想だったのかもしれない。
真白の心は揺れ、迷い、スケッチブックを閉じる。
そして気づく。
自分が惹かれていたのは、姿でも背中でもなく、目を見て語りかけてくれる“いま、ここにいる人”だったと。
――恋は、背中を見ているだけじゃ、終われない。
真白が描いた最後のスケッチは、初めて“正面”を向いた宮内の姿。
それはモノクロではなく、色のある、やわらかな恋のはじまりの色だった。
Serialization Info
Web Novel