Synopsis
「きみに、何か贈ろうと思う。何がいいかね」
本のページをめくる手をとめて、布張りのひじ掛け椅子に座っていた先生が、ゆったりとした口調でぼくに尋ねた。
「形の残らないものがいいです。食べものとか、花とか。いずれなくなるものがいい」
先生のかたわらに立っていたぼくは、すぐにきっぱりと答えた。
本当に、ほしくない。思い出の品なんて、ぼくには、いらない。
三年のあいだ、ぼくは先生のもとで多くを教わった。
「冬のひと」だった先生と、ぼくと、先生に仕える女のひとの物語。
2025.3.17.
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