Synopsis

「正義って、誰が決めたの?」

勇者に選ばれた少年・セリオは、そんなことを思ってはいけないと知っていた。
世界を救う英雄。神に祝福され、王に讃えられ、人々の希望を背負う存在。
その肩書きは重く、光り輝き、そしてどこか嘘くさかった。

──これは、世界の“正しさ”を書き換える者の物語である。

舞台は、周期的に“世界の記憶”がリセットされる魔法文明の大地。
魔王が生まれ、勇者が討ち、再び歴史が始まる――それが繰り返される「定め」だと誰もが信じていた。
だが、ある日セリオは禁書庫の奥で、奇妙な古文書を発見する。
それは“魔王の遺書”と呼ばれる一冊の書物。

「私は、世界を滅ぼす者ではない。
世界が歪みすぎたため、正す必要があっただけだ」

遺書には、敗れた者の言葉とは思えない静かな憂いと、深い自問が記されていた。
しかもその内容は、歴史書に描かれた「魔王像」とまるで噛み合わない。
世界の各地で目にする“人間による迫害”や“封印された村”は、遺書に描かれた事実にむしろ一致していた。
セリオは次第に、過去の“魔王”が本当に悪だったのか疑問を抱き始める。

やがて彼は知る。
遺書は、実は魔王ではなく「前の時代の勇者」が書いたものだということを。
そして自分こそが――その勇者の“記憶を封じられた転生体”であるということを。

記録を書き換える“神”、認識を制御する“聖堂”、
そして繰り返される“勇者と魔王”の茶番劇。
すべては「正しさ」を誰かに書かせるための構造だった。

物語の後半、セリオは選択を迫られる。
もう一度勇者として“正義の物語”を演じるか、
それとも勇者という名を捨て、世界の編集権を奪い返すか。

読み進めるほどに、「語り手」「記録者」「歴史」といった視点が次々と反転し、
最後には読者自身に問いが返ってくる。

――この世界、あなたならどう書き残す?

『魔王の遺書』は、反転構造のファンタジーにして、
“正義とは何か”“歴史とは誰のものか”を問う、静かなる革命の書。
ひとつの遺書をめぐる、勇者と魔王と、名もなき者たちの連環の物語。

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Alphapolis
Alphapolis04/16/2025
  • Current魔王の遺書