Synopsis

美濃の小大名、笛木家の城代家老、一之瀬頼母(46)は養子の身。
 ある日、大坂から戻った御用達が信じられない話をもたらす。
 公儀が諸国に隠密を放ち、その対策で隣国をはじめ諸大名は大わらわだという。
 江戸表からの飛脚が満身創痍で到着。〈お犬様〉を蹴って投獄され、遅れたと知った若き当主の笛木若虎は、隠密対策が犬猿の仲の隣国に遅れを取ったと激怒する。
 一人の浪人が国境の茶店で無銭飲食を働いた。その男、近松勘左衛門は仇討ちの旅にあるといい、隣国の奉行所は扱いがもっと丁重だったと聞こえよがしに言った。
 勘左衛門がもしも公儀隠密ならば厄介と、一之瀬は茶店の親爺を言い含め、勘左衛門を茶店で三日間働かせることで相対で済ませと命じる。
 隣国に偵察に送り込んだ目付が帰国した。隠密は、諸大名家の家系、犯罪や飯盛り女の多寡、当主の智愚、行状、世評、さらに側室の数まで、多岐に亘り調べ上げていると報告。
 その目的は、諸大名の順位付けのようだと、目付がいう。
「順位最下位の大名を改易することだったりして」――
 重臣の一人が冗談混じりに呟いた一言がその場を凍らせた。
 さらに、笛木家と隣国が最下位争いをしていると聞いて、若虎の怒りは頂点に達する。
 一之瀬は、今こそ御家の名声を高めるのが肝要と主張、恩赦、減税、孝行者の表彰、領内視察、ご落胤との感動のご対面といった施策を実行に移す。
 恩赦と減税は好評を博し、若虎は孝行者の話に感銘を受けて涙する。
 勘左衛門の仇、森夏時が城下に入った。森が勘左衛門など知らぬと言うと、勘左衛門は、真の名は竹芝大門だと打ち明け、仇討ち試合に臨む。そこへ本物の仇討ち姉弟が現れ、またも勘左衛門の嘘がばれる。一之瀬の配慮で姉弟が試合に臨み、見事に本懐を遂げる。
 一年前に病の前当主を愉しませた旅の軽業一座が興行の許可を願い出た。だが、若虎は喪中につき許可を見送り、その旨を一之瀬が直々に座長の松之丞に伝えた。
 松之丞は、「国の行く末を考える幸せ」という言葉を残して笛木城下を去った。
 勘左衛門も一座に同行して立ち去り、公儀隠密の噂はいつしか下火になった。
 若虎は、順位付けなど気にせず、大らかな国造りこそ大事と、一之瀬に藩政改革策の立案を命じる。
 一之瀬は今少しのご奉公を決意する。
 

Serialization Info

Web Novel

Service languages
Alphapolis
Alphapolis05/24/2020
  • Current隠密がやって来た!〜家老一之瀬頼母覚書〜