Synopsis
岩田屋町2013年、夏。
川島疾風が車ではねた男は、ヤクザの息子と名乗った。
たいした交通事故ではなかった。警察ではなくチンピラが呼ばれたものの、問題ではない。義理の弟になるであろう中谷勇次が、あらわれるなりいつもと変わらぬ啖呵を切り、蹴散らしていく。
「中谷勇次。しがないチンピラだよ」
感情を加工する方法を覚えずに生きていく勇次に、そのままでいてほしいと転職活動中の疾風は願う。
疾風は地元の槻本峠では最速の男として、県内外に愛車の赤いMR2と共にその名を轟かした走り屋だ。巻き込み確認を怠って事故を起こしたことに、再会した元恋人たちは勝手な見解をみせる。彼女たちと別れた原因に、疾風の夢は少なからず影響している。
「思うに、夢というのは呪いだ」
やがてヤクザの息子が報復に動き出したとき、絶望の中で疾風に夢を叶える機会はおとずれる。
夢という呪いにかかった男の一筋の願いは、時間や世界をこえて疾風のように駆け抜けていく。
Serialization Info
Web Novel